インターネットの世界は
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市場規模が継続して拡大している
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新しい企業が続々と参入している
などの条件が揃っているせいか、変化のスピードが比較的早い業界です。
そんな早い変化のなかで、新しい言葉が生まれることもよくあります。
しかし、起業家やメディアが生む新しい言葉が社会に定着することはほとんどありません。
新しい言葉の多くがただの流行的なバズワードとなり、数年経てば時代遅れな言葉になってしまいます。
それでも、なかには普及するのに成功する言葉もあります。
そのような言葉は一定の認知度を得たり、市場を作ったときに定着します。
この記事では2018年になって注目されはじめた
スコアリングエコノミー
について解説します。
◯◯◯◯エコノミー
という言葉は
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シェアリングエコノミー
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ギグエコノミー
などの言葉が定着しつつありますが、文脈的にはスコアリングエコノミーもこのようなシェア系のジャンルに分類されて普及すると思います。
なので、一種の経済圏として認識されるようになるかもしれません。
このページの目次
スコアリングエコノミーはどのようなものか?
ここからはスコアリングエコノミーについて重要なものごとをピックアップしながら全般的に解説していきます。
スコアリングエコノミーは新しい言葉ですが、中身はそこまで斬新なものではありません。
全体としては、社会や経済活動を効率化しようとする流れに沿ったものです。
効率的なものだからこそ、スコアリングエコノミーは普及する可能性があるのです。
「信用スコア」が中核にある
スコアリングエコノミーの中核となるのは個人の信用力をスコアリング(数値化)する
信用スコア
です。
スコアリングエコノミーにおいてスコアリング(数値化)されるのは人の信用力ということですね。
信用スコアについて簡単に説明すると、信用スコアは個人や法人の信用力を数値で可視化するサービスです。
可視化された信用力は様々な提携サービスで使われますので、すべての起点は信用スコアとなります。
信用スコアについて詳しく知りたい方は下記のリンク先でご確認ください。
信用スコアはデータによって分析される
信用スコアがスコアリングエコノミーの中心にあると説明しました。
では、信用スコアはどうやって数値化されるのでしょうか。
こちらについて簡潔にまとめると
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個人にひもづく様々なデータを
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AI(人工知能)が分析して数値化
となります。
つまり、個人のデータによってスコアは決まるのです。
よってスコアリングエコノミーが普及したとき、その流れに乗ろうとする個人は自分のデータの保管や記録に敏感にならなくてはいけません。
簡単にいえば、良いデータのみを意識してネット上に記録することが大事になります。
これがうまくいけば信用スコアが高くなります。
このような仕組みなので、
スコアリングエコノミー≒データエコノミー
とも考えられます。
さいきん「信用経済」や「評価経済」などの言葉を聞きますが、根底にあるのは個々のパーソナルなデータなのです。
よってデータの扱い方はこれまでよりはるかに重要になります。
得たスコアは提携サービスで利用できる
信用力をスコアリングしてくれるサービスを使って信用力を数値化してもらったら、その信用力を活用できるサービスを使いましょう。
信用力スコアリングサービスは、スコアリングされた信用力を活用できるサービスと提携しています。
なので、流れとしては
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信用力スコアリングサービスで信用力を数値化してもらう
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信用力スコアリングサービスと連携しているサービスを利用する
となります。
連携サービスを利用することによるメリットについては、スコアリングエコノミーのメリットについて説明する項目でまとめて説明したいと思います。
データはシェアリングエコノミー系サービスで記録しやすい
信用スコア向けのデータが記録しやすく、なおかつ信用スコアの連携サービスとなりやすいのが「シェアリングエコノミー」と呼ばれるサービスです。
というのも、シェアリングエコノミーは
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インターネット上で契約等が完了する
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基本的にCtoC(個人間)の取引
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個人間なので相手が信頼できる人かどうかを判断する必要がある
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機能として相互で評価するレビューシステムが標準化されている
などの特徴があり、これにより
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個人の信頼性を評価するためのデータが残りやすい
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個人の信頼性を評価するためのデータが増えて蓄積されやすい
というスコアリングエコノミーと相性の良いサービスとなっています。
なので、スコアリングエコノミーはシェアリングエコノミー系として普及する可能性があり、もしスコアリングエコノミーが普及すればシェアリングエコノミーはいま以上の盛り上がりが期待できます。
スコアリングエコノミーが普及することによるメリットは?
スコアリングエコノミーが普及するためには利用者や提携してくれる事業者に対して何かしらのメリットを提供する必要があります。
そこまで深くは説明しませんが、
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個人(一般利用者)
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提携するサービスの運営者
にとってどのようなメリットがあるのかを説明します。
個人は努力すればサービスの利用で優遇される
まずは個人のメリットについてです。
個人にとってのメリットはとてもシンプルで、信用スコアが高ければ提携サービスにおいて
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利用料金が安くなる
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入会審査等が不要になる
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特別なサービスが利用できる
など、総合的に優遇されながらサービスを利用することができます。
つまり実用的なメリットが発生するということです。
他にも、偏差値や所属企業・年収のように、獲得した数値を承認欲求を満たすために使うなどの使われ方も考えられます。
しかし、このような使い方では実用的なメリットはありません。
それでも恋愛やサークル活動のような場所では一定の効果がありそうです。
パーソナライズされたサービスを提供できる
つぎはサービスを提供する側のメリットです。
これはサービスの利用者にとってもメリットなのですが、信用スコアと提携しているサービスは個人個人に対して
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料金
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サービス内容
などを個別化(パーソナライズ)したサービスを提供できます。
サービス提供者も信頼できる顧客にサービスを提供した方がリスクが低く信用コストも下がるので、結果的にサービスの運営コストが下がりやすくなります。
他にも、もしスコアリングエコノミーが普及したら高い信用スコアを獲得した人は積極的に連携サービスを利用するでしょうから、広告宣伝費が削減できるなので可能性も高いと思います。
信用力スコアリングサービスの紹介
ここからは信用力をスコアリングするサービスを簡単に紹介していきたいと思います。
正直なところ、この分野については海外の方が日本より先行しています。
しかし、日本企業もスコアリングエコノミーへの参入を発表していますので2019年中には複数の企業がサービスを開始していると思います。
中国の芝麻信用
個人の信用力を可視化するサービスはアメリカのクレジットスコアが昔からありますが、ただ信用力を可視化するだけでなく様々なサービスと連携して規模を拡大しているのが中国の芝麻信用です。
https://pecu-nia.com/zhima-xinyong/
芝麻信用は巨大ECサイトとして有名なアリババグループ内の企業によって運営されています。
そのせいもあり、個人の信用力分析にあたって決済サービスのAlipay(アリペイ)の決済データが使えるというこれ以上ない強みがあります。
個人の決済データを把握するということは、その人の収入や趣味嗜好を把握することにも近いものがあります。
アリペイの決済データ以外にも膨大なデータを収集して信用力を数値化しているので、提携サービスも非常に多く中国人の生活になくてはならないものになっているようです。
ヤフーがビッグデータをもとに信用スコア「Yahoo!スコア」を開始
ポータルサイトやオークションで有名なyahoo!が信用スコア事業に進出することを発表しました。
信用スコアの名前は「Yahoo!スコア」で、2019年7月の開始を予定しています。
ヤフーの信用スコアはヤフーIDにひもづくので
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ネット通販の購入履歴(Yahoo!ショッピング等)
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中古品オークションの購入や販売の履歴(ヤフオク等)
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キャッシュレス決済アプリ「PayPay」の利用履歴
などのデータを信用力の分析に利用でき、精度の高さが期待できます。
ヤフーは「これからはデータの会社」になると宣言しているので、かなり力を入れてスコアリングエコノミーに取り組むはずです。
NTTドコモが「ドコモスコアリング」でスコアリングエコノミー参入
NTTドコモは「ドコモスコアリング」という信用スコアで2019年の春にスコアリングエコノミーへの参入を発表しています。
ドコモスコアリングはドコモの携帯電話契約者向けとなりますが、携帯電話の契約や支払い内容にはたくさんのパーソナルデータが含まれています。
なのでドコモは保有するデータの面で他社と比較して優位に立っているとも考えられます。
それに、NTTグループの持つ信用力の高さは若者世代以外にとても響きそうです。
日本全国に多数の店舗を展開しているのも大きな強みです。
LINEはアプリ上のデータを使いスコアリングエコノミーに参入
チャットアプリで有名な「LINE」は
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みずほ銀行
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オリコ(オリエントコーポレーション)
などと共同で信用スコア「LINE Score(ラインスコア)を運営します。
LINEはサービス運営当初はチャットアプリでしたが、提携や機能追加などでだんだんプラットフォーム化が進んでいます。
LINEのプラットフォームに集まるビッグデータを有効的に活用できれば精度の高い信用スコアが作成できるかもしれません。
日本でスコアリングエコノミーが普及するかどうかは法律や消費者意識次第
スコアリングエコノミーは人の信用力を数値化するので、スコアリングされた自分の信用力に不満を感じる人が必ずあらわれます。
低く評価された人が信用力スコアリングサービスを賞賛することは少なそうです。
個人の情報を分析して信用力を算出するという点も、物議をかもしそうな部分です。
なので、日本でもサービスがはじまったり流行したらおそらく問題になるはずです。
たくさん批判もされるでしょう。
EUのGDBRの例もあって法律面でも批判されるかもしれません。
それでも、政府はキャッシュレスを推進しているという事実があります。
ただキャッシュレスを促しているわけではなく、キャッシュレス決済によって得られるデータの活用も促しています[1]http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180411001/20180411001-1.pdf。
欧米の大企業や中国の芝麻信用がデータを活用して莫大な利益を生んでいるのを、政府としてもただ眺めているわけにはいかないのでしょう。
なので法律的なトラブルは意外と少ないかもしれません。
となると重要なのは消費者の意識です。
これについてはどのような結果が出るかわかりません。
しかし、均一化されたサービスや体験に不満を感じている若者は多そうなので、もしスコアリングエコノミーが普及するとしたらそれは若者からになるのではないでしょうか。