信用スコア市場への参入企業一覧と各社が参入する理由の考察

信用スコア市場への参入企業一覧と各社が参入する理由の考察

メディア等で信用スコアが取り扱われることが増え、中には

「2019年は信用スコア元年になる」

と予測する記者もいます。

このような強気の予想の裏には、複数の有力IT・ネット系企業の参入という根拠があります。

この記事では、どの企業が信用スコア市場へ参入もしくは参入を予定しているかを整理して、まとめます。

そして、なぜたくさんの企業が信用スコアへ参入するかを考察したいと思います。

【2019年8月版】日本の信用スコア市場への参入企業一覧

まず最初に、日本の信用スコア市場への参入を表明していたり、参入を予定している主な企業を一覧にして挙げます。

  • 株式会社NTTドコモ

  • オープンテーブル株式会社

  • 株式会社J.Score(ジェイスコア)

  • 株式会社メルカリ

  • ヤフー株式会社

  • LINE株式会社

※順番は50音順です

これらの企業の特徴としては

  • 大企業もしくは大企業の系列企業

  • 自社サービスからたくさんのデータを保有している

などが挙げられます。

※オープンテーブル株式会社はアメリカのOpenTable, Inc.の日本子会社です

ここからは、それぞれの企業の信用スコアのサービス名や簡単な概要をまとめます。

NTTドコモの「ドコモスコアリング」

NTTドコモは、いわずとしれた日本の3大携帯キャリアの一角です。

とはいえ、スマホ時代になりi-mode初期のような圧倒的なシェアはなくなっています。

しかし、それでも7,000万台以上の携帯契約があり、日本の市場では大きな存在感を示しています。

2018年10月にNTTドコモは自社の携帯契約者に対して同意のもとに信用スコアを作成し、それを提携企業に提供することを発表しました。

名称は「ドコモスコアリング」となります。

まずは新生銀行やマネーフォワードと提携して金融系サービスを提供するようですが、携帯キャリアとしての規模とそこから収集できるデータ量は巨大で、どのようにデータを活用していくかに注目が集まっています。

もしドコモが信用スコア市場で成功したら、3大キャリアの残り2社であるソフトバンクやKDDIは黙っていないでしょう。

ドコモが成功することによって、この2社と携帯事業への新規参入を準備している楽天の野心をおおいに刺激すること間違いありません。

なので、NTTドコモの直接的な競合である

  • KDDI

  • ソフトバンク

  • 楽天

は信用スコアへ将来参入する可能性はかなり高いと考えています。

※ソフトバンクは出資先の株式会社J.Score(ジェイスコア)を通してすでに参加していると捉えることもできます

株式会社NTTドコモが信用スコア事業「ドコモスコアリング」を開始します。

LINEのLINEスコア

チャットアプリで有名なLINEは「LINEスコア」という信用スコアを2019年6月にリリースしました。

LINEスコアは、質問に回答したりするだけで簡単に作成できます。

利用者に対してもしっかりメリットがあるサービスですので、すくなくともLINEの利用者にとってもメリットがあるサービスです。

LINEの信用スコアサービスである「LINEスコア」の仕組みを全般的に解説します。

ビッグデータを活かしたいヤフー

検索エンジンやオークションサイトで有名なヤフーは

  • ヤフーニュースやニュース内の「ヤフコメ」

  • ヤフオク

  • Yahoo!ショッピング

  • キャッシュレス決済アプリのpaypay

などのサービスを保有しており、さらに子会社を含めればアスクルや一休などの大規模なWEBサービスを多数保有しています。

ポータルサイトのヤフーは日本トップクラスの規模のWEBサービスで、ここからはユーザーの検索履歴などの貴重なデータも収集可能です。

なので、信用スコアを作成する上で重要となるデータに関しては最も隙がない存在です。

さらに、親会社であるソフトバンクとアリババの関係性も考えると[1]アリババの大株主がソフトバンクで、ヤフーの大株主がソフトバンク、信用スコア市場で成功する可能性は非常に高いように思います。

Yahoo!の信用スコアは「Yahoo!スコア」という名称で、サービスは2019年7月からはじまりました。

Yahoo!がヤフーIDにひもづいた信用スコア「Yahoo!スコア」事業を開始します。この記事ではyahoo!スコアの概要や仕組みを解説します。

キャッシュレス決済データを狙うメルカリ

フリマアプリで日本トップシェアを持つメルカリは、信用スコア事業への参入をインタビュー等で発言しています。

メルカリの場合は

  • シェアリングエコノミーのデータ(メルカリで得たデータ)

  • キャッシュレス決済のデータ(決済サービスの「メルペイ」で得たデータ)

このふたつを両輪にして事業を展開するはずです。

※他にも子会社や投資先の企業が保有するデータも活用される可能性は高いと思います

特にキャッシュレス決済で得られるデータは信用スコア事業では重要です。

メルカリの売り上げ金をメルペイで利用できるというのは、キャッシュレス決済のシェアを奪う上でとても有利になります。

さらに、メルカリは金融系の事業へ強い関心を示しているので、もし金融系の事業でも成功したらデータ量がさらに増え、信用スコア事業での成功率も高くなるでしょう。

メルカリが子会社のメルペイを通じで個人の信用力をスコアリングする事業を始めるようです。実際はどのようなサービスになるのかを考えたいと思います。

飲食店予約システムのTableCheck(テーブルチェック)

飲食店予約システムをレストラン利用者や店舗に提供しているTableCheck(テーブルチェック)は、飲食店を予約する利用者に対してスコアで信用格付けをすることを2019年1月に発表しました。

このサービスの背景にあるのは、飲食店を予約するけど来店しない無断キャンセル(ノーショー)や、直前キャンセルによるレストラン側の金銭・心理的な負担を減らすことだと思います。

レストランを利用することによって信用格付けされることに対して、不安や嫌悪を感じるかもしれません。

しかし、きちんとした利用者はいつもどおり利用すれば良いだけです。

ただ、「お客様は神様だ」というような考えでいるのは良くなくて、お客とサービス提供側は対等な関係であることを意識して振る舞うのがオススメです。

ちなみに、TableCheckはすでに説明したヤフーが2018年に行なった信用スコアの実証実験に参加しています。

両社でデータや信用スコアを共有するなどの提携があるかもしれません。

飲食店予約サービスなどをてがけるTableCheck(テーブルチェック)はテーブルチェックを経由して飲食店を利用した顧客を評価する信用スコア「TableCheckカスタマースコア」を開始します。この記事ではTableCheckカスタマースコアの概要を整理します。

AIスコア・レンディングのJ.Score(ジェイスコア)

J.Score(ジェイスコア)はAIスコアと呼ばれる信用スコアを作成し、個人向け融資に活用します。

既存の消費者金融が申し込み者の今と過去の信用力を重視しているのに対し、J.Score(ジェイスコア)はたくさんのパーソナルデータを分析することによって申し込み者の未来の信用力を予測して融資をおこないます。

なので、将来の目標に向かって努力している人などは、たとえ現在の信用力が低くても良い条件で融資してもらえる可能性があります。

なぜ各社は信用スコア市場を狙い参入しているのか?

ここまで日本の信用スコア市場へ参入している企業を一覧にし、それぞれの概要を簡単に説明しました。

ここまで紹介した会社は企業としての規模が大きく、それぞれの市場でシェアをとっている企業ばかりです。

なのになぜ信用スコアのような新しくて未知数の市場に参入するのでしょうか。

各社が参入する理由を考察します。

理由その1. ビッグデータ・パーソナルデータへの関心

企業にとってビッグデータの活用方法は企業の未来を決める重要事項です。

特に顧客(ユーザー)のパーソナルデータは注目されており、海外では中国の芝麻信用のようなパーソナルデータありきのビジネスでの成功事例も出はじめています。

もし信用スコア事業が成功したら継続的に膨大な量のパーソナルデータを収集することが可能になります。

そして企業は収集したパーソナルデータを分析することによって様々な知見を得ることができます。

さらに、パーソナルデータを起点にして様々なビジネスへの進出が可能となるのです。

もし

「データは新時代の石油だ」

この言葉が真実であれば、信用スコア事業の成功者は汲んでも汲んでも枯れない石油を手に入れることになります。

枯れない油田を所有していれば、これが桁外れの利益を生むことも容易に想像できます。

理由その2. 自社のプラットフォームへ囲い込み

信用スコアは一種のプラットフォームビジネスです。

自社で信用力スコアリングサービスを運営し、そこから自社もしくは提携他社のサービスへと利用者を送客して収益を生むビジネスモデルです。

古くは日本のi-mode、スマホ時代ではApp StoreやGooglePlayを見るとわかるように、プラットフォームビジネスは(成功すれば)長期間にわたって安定した収益を生みます。

プラットフォームの運営会社はすべてを自社でコントロールできるということもあり、プラットフォームビジネスは企業にとって非常に魅力的なのです。

信用スコアは高スコア保有者にとって直接的に利益が発生するサービスなので、一度そのプラットフォームを使用したら継続的に利用してもらえる確率が高いです。

継続して利用してもらえるということは継続してパーソナルデータの収集ができ、そこから新しいビジネスをプラットフォーマーがはじめることも可能です。

このように、ユーザーを自社に囲い込むことは企業にとって重要事項なのです。

個人向け信用格付け事業である信用スコアのサービスの内容と事業形態・ビジネスモデル、さらに利用者から見た使い方について解説します。

理由その3. 規模が巨大な金融市場の魅力

信用スコアは個人の信用力を数値化したもので、数値化された信用力はさまざまなサービスで活用できます。

なかでも最も活用できそうなのが金融市場です。

特に個人向けの融資(ローン)事業では、従来から信用力の精査、つまり与信がビジネスの肝でした。

信用スコアの数値はそのまま与信で利用できるので、精度の高い与信が期待できる、という訳です。

信用スコア事業へ参入するような会社は資金力があり、個人から信頼されている企業ばかりです。

個人向けの融資はかなり大規模なマーケットで、需要は常に高い状態にあります。

信用スコア事業へ参入してくる企業のほとんどが金融市場への参入を検討しているはずです。

個人の信用力を数値化する信用スコアは個人向けの融資(レンディング)で活用することができます。この記事では信用スコアを使った融資の仕組みとメリットについて解説します。

理由その4. 利用者のマナー向上が期待できる

おとなり中国では、信用スコア「芝麻信用」の普及によって国民全体のマナーが向上した、と言われています。

インターネットを使って消費者向けのサービスを運営している会社にとって、一部の悪質ユーザーは悩みの種です。

もしサービスに信用スコアが導入されたら悪質な利用者を減らす効果が期待できます。

ごく一部の悪質なユーザーのために膨大な運営コストがかかる場合もあるので、信用スコア導入によるコスト削減は大いに期待できます。

事業として成功する信用スコアはおそらく数個程度

ここまで

  • 信用スコア市場へ参入する企業

  • なぜ各社が信用スコア市場へ参入するのか

などを紹介・解説してきました。

信用スコア市場はとても大きくなる可能性があります。

なので2019年から2020年にかけてとても多くの企業が信用スコア市場へ参入するでしょう。

しかし、結局のところシェアを奪えるのは数社にとどまると思います。

利用者として注意したいことは、信用スコアを作成するということは自分の大切なパーソナルデータを提供することである、ということです。

もし怪しい会社やすぐに倒産するような会社に自分のデータを渡したら、個人情報流出や転売などの被害に遭う恐れが少し高くなります。

なので、信用スコアを作成するときは自分で信頼できると判断した企業のみで作成してください。

信用スコアは危険なサービスではありませんが、これは信頼できる企業を選んではじめて成立することです。

脚注・引用

脚注・引用
1 アリババの大株主がソフトバンクで、ヤフーの大株主がソフトバンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする