個人向けの信用格付け事業である「信用スコア」に関するニュースは増加する一方です。
さまざまな企業が信用スコアへの参入を表明しており、その都度ネットやテレビのニュースで取り上げられています。
しかし、利用者にとっては聞き慣れない言葉だったり新しい事業形態だったりするので理解がなかなか進まないようです。
そのせいか、ニュースに対する意見や感想としては
-
監視社会・管理社会の到来
-
格差を助長する
-
よくわからないけど怖いし不安
などのようなネガティヴな内容が目立ちます。
おそらくですが、このような意見は信用スコアのビジネスモデルや事業形態を把握することにより減るはずです。
そして、不安や恐怖よりも利便性が勝れば利用者は当たり前のように信用スコアサービスを使うはずです。
この記事では中国の芝麻信用などの既存サービスを参考にしながら、信用スコアのサービスの仕組みやビジネスモデル、さらには使い方などを全般的に解説します。
流れとしては
-
信用スコアサービスを運営する会社の事業・業務内容の整理
-
信用スコアのビジネスモデルを解説
-
利用者向けに信用スコアの使い方を解説
このようになります。
ただ、日本では独自に進化しながら信用スコアが普及する可能性があることは頭に入れておいてください。
そもそも中国と日本では文化や政治・経済のバックボーンがあまりにも違います。
なので、同じような方法を日本で採用してもビジネス的な成功は難しいのです。
信用スコアを運営する会社の事業・業務の内容
信用スコアは個人の信用力が数値化されたものです。
これは、個人の信用力を可視化・格付けする事業と捉えることも可能です。
個人や企業に対しての信用力の格付けはこれまでも金融系の会社や格付け機関等が行っていました。
しかし、私たちは普段の生活で自分の信用力を意識することはほとんどありませんでした。
だから信用スコアに対して不安や恐れを感じるのでしょうか。
しかし、信用スコアを運営する企業が行っている業務の内容を把握すればほとんどの不安は解消すると思います。
信用スコアの仕組みを理解するために、まずは信用スコアを運営する会社がどのような事業・業務を行なっているかをひとつづづ挙げて、整理します。
もちろん会社によって違いはありますが、根本となる物事についてはそれほど差はないはずです。
アプリ・WEBサービスの運営
個人が
-
自分の信用力を確認したい
-
信用スコアを診断してもらいたい
と考えて信用スコアサービスを利用するとき、入り口となるのは信用スコアを運営するインターネットサービスです。
具体的には
-
WEBサイト
-
スマートフォンアプリ
などが入り口になります。
iPhoneやAndroidなどのスマホに搭載されている独自のデータも利用できることからサービスを運営している企業はアプリのダウンロードを誘導するでしょう。
よってアプリ経由での利用の方が多くなるように思います。
ただ、すでに日本で普及しているサービスがサービス内のいちコンテンツとして信用スコアをはじめる事例が2019年に増加しそうです。
このような場合は新しくアプリがリリースされたりすることはなく、既存のアプリ内への機能追加という形式になります。
このような機能追加の方が既存ユーザーにとって心理的な負荷が少ないので、利用者を増やしやすいと思います。
パーソナルデータの収集と管理
信用スコアを作るとき、利用者はまずサービスへの登録が必要となります。
登録はもちろん無料です。
ただ、おそらく年齢制限があり、サービスにもよりますが信用スコアが作成できるのは18歳もしくは20歳以上になると思います。
登録が完了したら、利用者はパーソナルデータを登録します。
というのも、信用スコアは個人にひもづく情報(パーソナルデータ)によって分析・作成されるからです。
※スコア分析に使われるデータはすべて同意のもとに収集・分析されます。なので嫌悪感を感じる人はデータ提供を拒否すれば良いだけです
サービスを運営する企業は個人から預かったパーソナルデータを安全に保管しなくてはなりません。
もし信用スコアのようなパーソナルデータが起点になるサービスにおいて個人情報が流出するなどしたら企業にとって致命的だからです。
なので、運営する企業にとって
-
サイバー攻撃・サイバーテロ
-
個人情報を狙う犯罪
などからパーソナルデータを守り、安全にデータを保管することはとても重要な仕事となります。
利用者目線でも、運営する企業に対して
「この企業に対して自分の情報を渡すのは不安だ・・・」
と感じたら利用しない方が良いと思います。
パーソナルデータはとても大事な情報です。
だから、信頼できる企業だけに渡すべきでしょう。
AI(人工知能)による信用力のスコアリング
信用スコアは個人にひもづく情報(パーソナルデータ)によって分析・作成されるとすでに述べました。
この「分析・作成」は人間のおこなう業務ではありません。
基本的にはAI(人工知能)が行う業務です。
※稀に人が介入するようなケースもあるでしょうがレアだと思います
信用スコアは
-
パーソナルデータ
-
AI(人工知能)
このふたつの組み合わによって作成されるのです。
よって信用スコアを運営する企業は機械学習エンジニアやデータ分析力に優れたデータサイエンティストなどの人材をよく募集しています。
継続的なデータ収集と分析アルゴリズムの更新
繰り返しになりますが信用スコアはパーソナルデータを分析することによって作成されます。
しかし、人間は生きていると自然とその人にひもづくパーソナルデータが変化・増加します。
さらに、時代や社会の変化などによってその人が信用できるかどうかの判断基準も変わります。
なので正確な信用力の判定をするためには、常に変化する
-
パーソナルデータの内容
-
信用スコア作成の基準
などに運営企業は対応しなくてはなりません。
具体的には
-
変化するパーソナルデータを(同意のもとに)継続的に収集
-
AIのアルゴリズム(計算方法)を定期的にアップデート
などの業務が必要となってきます。
これらにともない個人の信用スコアは定期的に変動しますが、変動すること自体は普通のことです。
自社サービスとの信用スコア連携
信用スコアは個人の信用力を数値化してくれます。
けれど、よくよく考えると個人の信用力は数値化されてもそれだけでは意味がありません。
信用力の高さを活用できるサービスに利用してはじめて意味を持ちます。
信用スコアを運営もしくは将来の運営を表明している会社のほとんどが自社もしくは子会社・出資先などに信用スコアを活用できるWEBサービスを保有しています。
このような自社サービスを信用スコアと連携し、そのまま信用スコアの利便性の向上に取り組む企業は増えるはずです。
利用者としてはもし高い信用スコアを保有していれば提携サービスにおけるメリットが増えますので、積極的に利用しようという気になると思います。
他社提携サービスの審査や提携
高い信用スコアを持つと提携サービスで優遇されます。
そして提携サービスは何も信用スコアを運営する会社の自社サービスだけではありません。
信用スコアを運営する会社は自社の信用スコアを利用している人が使える提携サービスを増やします。
ただ、やみくもに提携サービスを増やすのではなく
-
信用スコアとの相性は高いか
-
サービスを運営する会社は信頼できる企業かどうか
なども審査するはずです。
自社の信用スコアの利便性を高めるためには提携サービスを増やさなくてはなりません。
よって、提携サービスを増やすことは信用スコアを運営する会社の重要な仕事となります。
他社提携サービスからのデータのフィードバック
信用スコアを作成したユーザーが提携サービスを使った場合、提携サービスの利用履歴が提携先に蓄積されます。
その中には、
-
商品のレンタル履歴
-
シェアリングエコノミー系サービスの利用履歴
-
キャッシュレス決済の履歴
-
他のユーザーからのレビュー・評価
なども含まれる可能性があります。
このようなデータは放置するのはもったいないです。
というのも、このようなデータは
-
利用者の信用スコア分析
-
信用スコアのアルゴリズム改善
などに活用できるからです。
なので、信用スコアを運営する会社は提携会社から、ユーザーの合意のもとにデータのフィードバックを受けるはずです。
信用スコアのビジネスモデルはプラットフォーム型
ここまで、信用スコアを運営する企業の代表的な業務内容をいくつか紹介しました。
これらの内容を把握するだけでも、利用者にとって不安が軽減されると思います。
ここからは、信用スコアのビジネスモデルの解説です。
信用スコアは基本的にはプラットフォーム型のビジネスとなります。
そして、ビジネスの中心には信用スコアが存在しています。
コンテンツの内容
プラットフォーム型のビジネスはたくさんの人が集まらなければ成立しづらいビジネスモデルです。
なので魅力的なコンテンツ(サービスの内容のこと)を用意する必要があるのですが、信用スコアのようなサービスにおいてコンテンツとなるのは
-
個人の信用力を数値化する信用スコア
-
信用スコアの活用先となる提携サービス
となり、かなりシンプルです。
※もちろんサービスによって違いはあります
なので、
-
納得度や公平性が高い信用スコアの値付け
-
優れた提携サービスの選定
-
(利用者に対して)提携サービスを利用するメリットの訴求
などが重要になります。
とくに信用スコアの高低については利用者から批判の声が上がるでしょうから、批判を少なくする工夫が必要だと思います。
送客装置としての信用スコア
もし信用スコアが普及したら、そのサービスにはたくさんの人が登録し、スコアの変動を確認するために定期的にサービスにアクセスします。
そして、人気のある信用スコアと提携しているサービスには自身の信用スコアを活用してメリットを享受しようとする人がたくさん訪れるはずです。
信用スコアと提携するサービスを使うと、信用スコア側に提携サービスでの行動データや評価のデータフィードバックされます。
※基本的にはすべてユーザーの同意のもとにデータが利用されるので安心してください
提携サービスは信用スコアを分析するための、データの供給源でもあるのです。
信用スコアには、傾向として分析に使えるデータが増えるほどスコアが高くなる、というものがあります。
なので、自身の信用スコアを上げたいと考える人は、提携サービスを利用してデータを増やすことが近道となります。
整理すると
-
信用スコアを作成する
-
(信用スコア保有者にとって)提携サービスを使うことにメリットがある
-
サービスを使えば信用スコアが上がる可能性が高い
-
高い信用スコアを保有していればより大きなメリットが生まれる
-
定期的に信用スコアを確認する
このような循環が生じることになります。
信用スコア→提携サービス→信用スコア→提携サービス→この繰り返し
このようにユーザーは流れます。
提携サービスを使う人は自身の信用スコアを下げまいと、模範的な使い方をする人がほとんどのはずです。
なので提携サービスからしたら模範的な顧客を送客してくれる信用スコアは送客装置(集客源)としてとても優れたものになります。
売り上げ・利益は手数料モデルが基本
信用スコアは手数料モデルで利益を出します。
提携サービスによって異なりますが、信用スコアサービスから提携先への
-
新規会員登録
-
サービスの利用
などで手数料(信用スコアの利用による手数料)が発生し、それが信用スコア運営会社の売り上げ・利益となります。
提携サービスにとっては、信用スコアサービスが集客ツールとなるわけです。
この仕組みだと、提携サービスからしたら広告宣伝費がアフィリエイトのような成果報酬型(成果が発生した時にだけ料金が発生する仕組み)となり、リスクは少なくなります。
また、手数料とは別で信用スコアサービスがポータル化して、そこに広告を貼って収入を得るようなケースも登場すると思いますが、送客手数料と比較したら売り上げ規模は少ないと思います。
キャッシュレス決済の手数料
信用スコアサービスによっては、自社でキャッシュレス決済サービスを扱っています。
もし提携サービスにおける決済方法として、信用スコアを運営する会社の決済サービスが自動的に組み込まれるようなら、そこからキャッシュレス決済を拡大できるかもしれません。
決済ですので、決済手数料を運営会社は受け取ることができます。
キャッシュレス決済のデータは信用スコアにおいて非常に重要なデータとなるので、信用スコアを運営する会社はこのような提携を狙うはずです。
自社による個人向け融資などの金融事業で利益を出すこともある
信用スコアとローン・融資事業はとても相性が良いです。
というのも、どんな理由であれ個人・法人が金融機関からお金を借りるとき、信用力の審査は必須だからです。
そして、日本に住んで普通に生活していれば
-
車の購入
-
家の購入
-
結婚資金
-
子供の学費
などで金融機関から融資を受ける機会が出てきます。
もし急にお金が必要になったとき、あらかじめ信用スコアで信用力を可視化していればその数値をそのまま使い
-
融資上限
-
金利(融資の利率)
などを算出することができます。
よってお金を貸す側はスピーディに審査して融資することが可能になります。
もし特定の企業の信用スコアサービスが大成功し、サービスが若者を中心として普及したと仮定します。
この会社が自社で融資事業を開始したらかなり大きな事業になるはずです。
じっさい信用スコアへの参入を表明している
-
LINE
-
NTTドコモ
などは貸金業の免許を持つ金融機関と提携し、信用スコアを使った融資事業を行う予定です。
利用者にとっての信用スコアの使い方と注意点
ここまで信用スコアの
-
仕組み
-
ビジネスモデル
を解説してきました。
ここからは利用者にとっての使い方や注意点を解説したいと思います。
まずは信頼できる信用スコアサービスを選ぶ
信用スコアは作成するにあたって、利用者のパーソナルデータの登録が必要になります。
なので、自分のデータを安心して提供できる会社のサービスを使うことが大事です。
個人向け信用格付け事業は、事業への参入障壁がかなり高いという特徴があるので
-
大企業
-
有名な会社
などしか参入しないと思います。
なので基本的には大丈夫だと思いますが、自身で調べて運営会社をしっかり選んでください。
ただ、選び方に関してはもし個人向け信用格付け事業が省庁や団体などによって許可・認定される仕組みが将来できたら、許可・認定されているサービスを選べば良いだけです。
サービス選択時には提携サービスも確認
信用スコアサービスを選ぶとき、信頼できる会社かどうかの判断がまず大事です。
その次はその信用スコアがどんなサービスと提携しているかを確認してください。
提携サービスを確認するときのポイントは
-
自分がよく使うサービスが提携サービスに入っているかどうか
などがあります。
信用スコアのアップダウンに一喜一憂しない
信用スコアは定期的に変動します。
自分のパーソナルデータが同一でもスコアは変化します。
これは分析アルゴリズムの更新による変化です。
数値は上がったり下がったりしますが、基本的には
-
倫理的
-
道徳的
などと他者から評価されるような行動をして、それをデータとして蓄積すれば上がる確率は高くなります。
また、ハック的な手法が噂レベルで広がるでしょうが、そのような小手先のテクニックは気にしない方が良いと思います。
信用スコアを使わないという方法もある
ここまで信用スコアに関して仕組みや使い方を解説してきました。
個人の信用力を数値で可視化する、というのは確かに便利ですが嫌悪感や拒否感を感じる人もいるはずです。
このような場合はシンプルに信用スコアを使わないという方法があります。
日本では普通に仕事をして、安定的な収入を得ていれば一定の信用力を得ることができます。
なので、真面目に働いているだけでそれなりに事足りるのです。
新しいサービスだといって飛びつくのではなく、自分にとってメリットもしくはデメリットがあるかどうかを判断して信用スコアを利用してください。
信用スコアはただのツールです。
もし信用スコアの上下が気になって信用スコアやパーソナルデータの変化に一喜一憂しているようでは本末転倒です。