これまで、消費者金融・カードローンなどでの「キャッシング(お金の借り入れ)」において、各社は申し込みをする人の
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専門機関が保有する信用情報
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収入や所属している企業の情報
などを重視して審査してきました。
言い換えれば、「定量的[1]「定量的」とは数値で表せる物事のことです。」な情報を元に審査を行ってきたとも言えます。
借り入れを希望するすべての人に対して、ベテランの融資担当者がじっくりと数回にも及ぶ面談を行い人柄や信用力を審査するのはじっさい不可能なので、これは仕方がありません。
そんな状況の中、AI(人工知能)が融資希望者の
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趣味や休日の過ごし方
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住んでいる地域や出身地
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家族構成
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SNSでのプロフィールや友達
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お酒やタバコの量
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海外に行った経験の有無
など、いっけん融資と関係なさそうな膨大な量のデータを受け取り、信用力をアルゴリズムで
「スコアリング(数値化)」
して、スコアにもとづいて融資内容を決定するサービスが日本国内や海外で増えています。
収入や年齢などの単純な数字から得られる情報だけで信用力を算出していないので、ある意味「定性的」な審査と言えます。
このように、個人の膨大なプロフィール情報から与信審査を行い、スコアリングして融資をおこなうサービスは
「スコア・レンディング(Score Lending)」
と呼ばれています。
スコアレンディングではこれまでのような定量的な審査ではなく、定性的な審査を行えるのでよりパーソナル(個人的)な融資の審査がおこなえます。
その結果として、お金を借りる側は
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これまで融資を断られていた人でもお金を借りられる
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適切な金利で適切な金額を借りる人が増える
などの良い影響が期待できます。
このページでは、スコアレンディングの意味や仕組みを簡単に解説したのち
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日本国内のスコアレンディング会社・サービス
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海外のスコアレンディング会社・サービス
などを紹介し、サービスの内容を比較したいと思います。
正直なところ、2019年8月現在では比較するほどのサービスはまだ揃っていませんが、フィンテックや個人のスコアリングビジネスに興味がある方は参考にしてください。
このページの目次
スコアレンディングとは?
まずはスコアレンディングについて、簡単に解説したいと思います。
スコア・レンディング(Score Lending)とは
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スコア(得点・成績)による
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レンディング(融資・貸し出し)
という意味です。
つまり、申込者の個人的なデータを分析し、信用力を数値化して融資金額や利率を決める融資ということです。
他にも呼び方としては
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AI与信[2]審査の判断に人工知能を使っているサービスはこう呼ばれることがあります。
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ビッグデータ与信
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オンラインレンディング
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オルタナティブレンディング
などと呼ばれます。
おそらく今後はネット上で申し込み・審査などが完結する融資である
「オンラインレンディング」
の一種として
「スコアレンディング」
が広まると思います。
融資の仕組みや流れ
スコアレンディングの融資の仕組みは、一般的な融資とそれほど違いはありません。
融資の流れをまとめると
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融資希望者からプロフィールなどの情報を受け取る
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データを分析して信用力を数値化
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信用力のスコアから融資条件が決定
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お互いが合意すれば融資を実行
このようになります。
※スコアレンディングでも個人に対しての融資の場合は総量規制の対象となります。
この流れの中で、これまでの融資の仕組みとの最大の違いは
「信用力が数字で確認できること」
だと思います。
そして個人の努力で信用力を高くすることができ、信用力が高い人は
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低い金利
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高い融資上限
でお金を借りることができます。
スコアが低い人は、この逆となります。
つまり、信用力が高いとよい条件でお金を借りることができるのです。
信用力のスコアはどのようにして決まるのか
スコアレンディングで肝になるのは、信用力のスコアリング(数値化)です。
信用力という目に見えにくい能力のスコアリングにあたって、大事なことは
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信用力の分析にどんなデータを用いるのか
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データ処理にあたってどんなアルゴリズムを用いるのか
この2点に集約されます。
分析に使うデータはとても重要で、ここで質が低かったり意味がないデータを使うと信用力を正しく数値化できません。
集めたデータを処理するアルゴリズムの中身もとても重要ですが、ここは各社の企業秘密となります。
ただ、スコアレンディングでのスコアリングはビッグデータとAI(人工知能)によるディープラーニングの組み合わせが主流です。
なので、会社によってはどのような基準で人工知能がそうスコアリンングしたのかわからない、ということも起こり得ます。
スコアレンディングの特徴
スコアレンディングの特徴としては
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大量のデータを読み取り個人の信用力をスコアリング
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スコアリングの結果にもとづいて融資を実行する
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融資に対しての返済状況などをデータとして収集する
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最新のデータをつかい信用力をスコアリングする人工知能のアルゴリズムを更新する
この行動を繰り返すことによって、融資内容の精度が日々上がっていく点です。
なので、膨大なデータを収集・処理できる立場にある企業の方が優れたサービスを提供できる可能性が高くなります。
融資をする側からみたメリット
スコアレンディングは融資を受ける側にもメリットがある仕組みです。
なんといっても最大のメリットは、これまで金融業者からお金を借りれなかった人でもお金を借りれる可能性がある点です。
一般的な金融事業者は、融資希望者の職業や去年の年収などを重視します。
対して、スコアレンディングは職業や年収以外にも様々な情報を集め、融資希望者の未来の返済能力を予測します。
そして
「今は収入が低くても将来的には収入が高くなるしだろうし、性格的にも信頼できる人物だ」
とAIによって判定してもらえたら、信用力を表すスコアは高くなります。
スコアが高くなれば、良い条件で融資を受けれるようになります。
このように、とくに若い人などは自分の将来性を見込んで融資を受けることができるというメリットがあります。
ここまで、簡単にスコアレンディングの仕組みについて説明してきました。
もっと詳しく信用スコアを使ったスコアレンディングについて知りたい方は下記のリンク先を確認してください。
日本のスコアレンディングサービス比較【一般個人向け】
ここからは、一般の個人向けのスコア・レンディングサービスを紹介していきます。
ただ、正直なところ2019年8月現在は比較するほど会社やサービスが出揃っていません。
おそらく2019年の後半くらいまでには各サービスの機能や特徴で比較するくらいの数が揃うはずです。
ドコモのレンディングマネージャー
NTTドコモは、自社の携帯電話契約者向けに
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信用スコアサービスの「ドコモスコアリング」
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信用スコアにもとづく金融アプリ「レンディングマネージャー」
を発表しています。
正式なサービス開始が2019年の春以降予定ということもあり、詳細は明かされていません。
しかし、レンディングマネージャーはおそらくスコアレンディングの一種で、信用スコアにもとづいた融資サービスのはずです。
LINEのLINE Pocket Money(ラインポケットマネー)
LINEは、LINEアプリ内から同意のもとに収集したデータを分析した信用スコア「LINE Score」を使った融資サービスである
LINE Pocket Money(ラインポケットマネー)
を発表しています。
開始は2019年の夏頃を予定しています。
おそらくですが、これまでの個人向け融資サービスよりも低金利での貸付が期待できます。
日本のスコアレンディングサービス【法人・事業主向け】
日本の法人(会社のこと)や、個人事業主・フリーランス向けにスコアレンディングを提供している会社は
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アルトア株式会社
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株式会社クラウドワークス
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みずほ銀行
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三菱東京UFJ銀行
などがあります。
それぞれ紹介していきます。
※2019年8月現在確認できた企業です
アルトア株式会社の事業主向けのレンディング
厳密にはスコアレンディングに該当しませんが、近しいものではあるのでアルトアも紹介します。
アルトア株式会社は
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オリックス株式会社
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弥生株式会社
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d.a.t.株式会社
によって設立された企業です。
それぞれの強みである
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弥生が保有する膨大な会計データ
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オリックスが持つ融資の与信ノウハウ
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d.a.t.株式会社のAI技術
などによってオンライン上で完結する中小企業・個人事業主向けの融資サービスをおこないます。
よって個人は融資の申し込みができません。
具体的には、従来のような決算書から分析した融資ではなく、仕分けのデータ1件づつをAI(人工知能)によって細かく分析して融資の審査を行います。
最初は会計ソフトの弥生の会員に限定してサービスを開始するようですが、おそらく様子を見ながら徐々に対象を拡大していくでしょう。
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サービス名:アルトア
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サービス開始日:2017年12月
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運営会社:アルトア株式会社
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融資対象:比較的小規模な事業主

アルトア
アルトアには「トランザクション・レンディング」の要素がある
スコアレンディングとは異なりますが、過去と現在の取り引き状況を元に与信を行う
「トランザクション・レンディング」
という融資方法があります。
「トランザクション」とは、「処理」「売買」という意味です。
アルトアには
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アルトアは弥生でわかる売り上げのデータ
というトランザクションのデータを元に与信を行うのでトランザクション・レンディングの一種とも言えます。
クラウドワークスの「クラウドキャッシュ」
クラウドワークスは、日本ではトップクラスのクラウドソーシングサイトで、クラウドワークスで働くクラウドワーカーのための融資サービスが
「クラウドキャッシュ」
です。
クラウドワーカーは、実績を積み重ねると仕事を依頼した企業から評価をフィードバックしてもらうことができます。
つまり良い仕事をした人には良い評価が、数字というわかりやすい形で付与されます。
そして評価は
「クラウドスコア」
として総合的な数値になり、クラウドスコアの数値を信用力の根拠として融資をおこないます。
ただ、お金を貸すのはクラウドワークスではなく、クラウドファンディングで有名な「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」となります。
日本では個人事業主の信用力は概して低く、個人事業主として生きていこうと考えている人にとっては有難いサービスですね。
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループも参入予定
株式会社三菱UFJフィナンシャルグループは株式会社エクサウィザーズと提携して企業の銀行口座の入出金データを利用した与信スコアリングシステムの開発を発表しました。
具体的にはおそらく三菱UFJグループでの口座の入出金履歴をエクサウィザーズが開発するAI(人工知能)が分析し、信用力をスコアリングします。
そして、スコアの数字にもとづいて条件を決定して融資を行うのだと思います。
海外のスコアレンディングサービス一覧
多くのネットサービスで当てはまることですが、日本で導入される仕組みの多くは海外(特にアメリカ)で注目されているビジネスモデルを輸入したものです。
よって海外には既に成功しつつあるスコアレンディング事業者も多く、中でも
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Kabbage(キャベッジ)
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Karrot(キャロット)
などが有名です。
SNSなどのwebサービル利用状況をAI与信に使う「Kabbage(キャベッジ)」
Kabbage(読み方は「キャベッジ」)はリクルートやソフトバンクが出資していることで日本でも知名度が高い企業です。
融資対象は法人、中でも中小企業で、
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会計クラウドソフトの使用状況
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大手ECサイト(Amazon・ebay)の売り上げ状況
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決済サービス(ペイパル・スクウェア・ストライプ等)の利用状況
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SNSアカウントのデータ
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SNS上での評判
などのデータをAIが読み取り、適切な融資額・金利を算出します。
年利は12〜数十%まで変動しますが、平均的な金利は年率で30%半ばと公表されています。
もちろん信用度が高い方が良い条件で融資を受けることができます。
また、人ではなくアルゴリズムが融資判断をするので審査が非常に早いという特徴があります。
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サービス名:Kabbage
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運営会社:Kabbage, Inc.
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サービスURL:https://www.kabbage.com/
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融資対象:中小企業

Kabbageサービス画面
個人向けの融資サービス「Karrot(キャロット)」
Karrot(キャロット)はKabbageによって運営されていますので、Kabbageとは姉妹サービスと言えます。
Kabbageとの違いは融資対象となる顧客と、審査に使うデータでKarrotでは
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融資対象:一般の消費者に対して融資
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審査に使うデータ:銀行口座の入出金データ
となっています。
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サービス名:Karrot
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運営会社:Kabbage, Inc.
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サービスURL:https://www.karrot.com/
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融資対象:個人

Karrotサービス画面
ZAMLを運営するゼスト・ファイナンス
AIによる与信評価プラットフォーム「ZAML」を運営するゼスト・ファイナンスはお金の貸付をせず金融機関に与信アドバイスをする立場をとっています。
与信の分析に使うデータの量も多く
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審査を申し込むときの文字の書き方(大文字か小文字か等)
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SNSでの行動や発言
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SNSでの友達の数や友達の内容
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ネット通販の購入履歴
などの他にも数千種類のデータによって与信情報を分析しているとされ、その分析能力はフォード等大手企業で導入されるなど高く評価されています。
・ゼスト・ファイナンスURL
Branch(ブランチ)は携帯の個人情報をフル活用
Branch(ブランチ)はアフリカ向けのサービスで、個人向けの小口融資を行なっています。
特徴的なのはスマートフォンの電話帳を含む携帯の中に存在するデータをフル活用して与信を行なっている点です。
携帯電話の普及が著しいアフリカならではの与信方法と言えます。
・Branch(ブランチ)アプリ
OnDeck(オンデック)は膨大なデータを使い与信を分析
OnDeckは企業向けの融資の与信を行う企業ですが、JPモルガンと提携するなどしてシェアを拡大させています。
与信に扱うデータの種類は2,000種類以上と言われており、公開されている情報だと
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クラウド会計ソフトでのお金の流れ
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SNSに書き込まれたコメント
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ネット通販の購入履歴
などを利用しています。
WeLab(ウィラボ)はSNSとの連携によるメリットがある
WeLab(ウィラボ)は香港の企業で、SNSのデータ等を活用して個人への融資額や利率を決定します。
こちらもデータはかなり細かくて
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どんなアプリをダウンロードしたか
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SNSでの交友関係や行動
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学校の成績
などを使います。
SNSとの連携も積極的で、
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Facebook
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LinkedIn
などのデータをWeLabに渡せば金利が引き下がるなどの特典があります[3]ローン低金利なら個人情報でも差し出す中国人 自撮りヌード写真の担保もを参照しました。。
自分の信用スコアを気にしながら生活するSFのような時代
Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグはネットの力を使い、世界が今より透明化・可視化することによってより良くなるだろうと主張しました。
SNSなどによって誰でも世界力に自分の言葉で発言できるようになった結果、日本のSFアニメ
「PSYCHO-PASS(サイコパス)」
の犯罪係数のように自分の価値が数字化される世界になりました。
その結果として、世界が良くなるかどうかはわかりません。
しかし、私たちは現実世界の言動だけでなくSNSなどのネットサービスでの言動についても注意深く行動しないといけない時代になったようです。
脚注・引用
↑1 | 「定量的」とは数値で表せる物事のことです。 |
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↑2 | 審査の判断に人工知能を使っているサービスはこう呼ばれることがあります。 |
↑3 | ローン低金利なら個人情報でも差し出す中国人 自撮りヌード写真の担保もを参照しました。 |