テレビドラマや映画の影響か、
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中小企業が銀行からの融資を依頼するとき
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個人が消費者金融などからお金を借りるとき
などでは人間同士がオフィスで面と向かっておこなうイメージが強いです。
大人気ドラマ「半沢直樹」でも、時代設定のせいかインターネットを使っている場面はとても少ないです。
しかし、2010年代になり
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ビッグデータ
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AI(人工知能)
このふたつを組み合わせた、インターネットを使った融資サービス
「オンラインレンディング」
が新しい融資方法として注目されています[1] … Continue reading。
オンラインレンディングとは
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インターネットを・スマホを使った
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融資サービス
のことで、とても広い意味を持ちます。
インターネットを使った融資サービスにはたくさんの種類があります。
オンラインレンディングの一種の
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AIスコア・レンディング
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ソーシャルレンディング
このふたつを比較しても仕組みは全然違います。
なのでオンラインレンディング全体ではなく種類ごとに個別で理解しないとサービスの使い方を間違えてしまう可能性があります。
この記事ではオンラインレンディングの
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種類ごとの仕組み
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種類ごとの代表的なサービス
を紹介したいと思います。
このページの目次
種類その1. AIスコア・レンディング
AIスコア・レンディングは個人や企業の融資を返済する能力、つまり信用力をスコアリング(数値化)し、そのスコアに基づいて
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金利
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融資上限
などが変わるサービスです。
信用力をスコアリングするときはさまざまなデータを使います。
例を挙げると
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年齢・学齢・年収・住所などのプロフィール情報
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住宅の有無や投資歴などの資産に関する情報
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SNSでの発言・行動や友人とのつながり
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ECサイトでの商品の購買状況
など、会社によって使うデータに違いはありますが膨大な量のデータを分析して精確に個人や法人の信用力を数値化しています。
信用力のスコアはいちど決まったらもう変わらない、というものではなく本人の努力でスコアアップが可能です[2]逆に信用力が下がるような生活をしているとスコアは下がる確率が高いです。。
なので地道に努力を積み重ねていけば
「信用力が高い(将来の返済能力が高い)」
と判断され、よい条件で融資してもらうことができるのも特徴のひとつです。
代表サービス – J.Score(ジェイスコア)のAIスコア・レンディング
J.Score(ジェイスコア)は日本で初めて人工知能を使ったAIスコア・レンディングをはじめたことで有名です。
従来の個人向け融資と比較すると圧倒的な低金利を実現しているので、金利だけでもメリットは大きいです。
運営会社の株式会社J.Score(ジェイスコア)は大手企業(みずほ銀行とソフトバンク)によって設立された会社です。
総合的には
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自分の信用力をAIスコアという数字で確認できる面白さ
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金利の低さ(年0.8% – 12.0%)
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大手企業の安心感
など、利用するメリットは多いのではじめてのAIスコア・レンディングとしてはかなりおすすめです。
代表サービス – LINE Pocket Money(ラインポケットマネー)
LINEは信用スコア「LINE Score(ラインスコア)」を使った、個人向け融資サービス「LINE Pocket Money(ラインポケットマネー)」を2018年11月に発表しました。
プラットフォームとしてのLINEから(同意の元に)収集できるデータを使い信用力を分析し、その結果にもとづいて融資してくれるサービスです。
もちろん、申し込みから融資まですべてアプリ上で完結します。
J.Score(ジェイスコア)とおなじくみずほ銀行と提携しているので、高い与信ノウハウがあり、安心して利用ができます。
サービスの開始は2019年の夏頃を予定しています。
代表サービス – 新生銀行のスマートマネーレンディング
新生銀行は、携帯電話の通信キャリア大手のNTTドコモが提供する信用スコアサービス「ドコモスコアリング」と提携して、
スマートマネーレンディング
というスコアレンディングサービスを提供する予定です[3]http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1810/17/news113.html。
ただ、利用できるのはNTTドコモの携帯電話の契約をしている人のみとなります。
信用スコアの分析にはドコモ携帯の利用データが使われます。
ということは、ドコモの携帯電話の利用状況、具体的には毎月の利用料金の支払い状況に問題があれば融資条件が悪くなるなどのデメリットが発生する可能性がある、ということです。
種類その2. トランザクションレンディング
トランザクションレンディングとは、特定のプラットフォーム内でのじっさいの取引状況データから信用力を測定し融資してくれるサービスです。
この、「特定のプラットフォーム」の例にあげると
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楽天モール
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Amazonマーケットプレイス
などがあります。
これらのサービスに出店して、商品を売っていればその日々の売買のデータは販売や決済のプラットフォームを提供している楽天やamazonとも共有することになります。
プラットフォーム側は融資の申し込み者の日々の
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サイトのPV数の変化
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決済回数
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売り上げの変化
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客単価の変化
などのデータを分析して、その店舗のリアルタイムの返済能力を即時に、正しく測定できる、という仕組みです。
お金を借りる側としても
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審査に時間がかからない
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データはプラットフォームがすべて確認できるので資料を作成する必要がない
などのメリットがあります。
代表サービスその1 – 楽天スーパービジネスローン
「楽天スーパービジネスローン」はECプラットフォームの「楽天」に出店している店舗向けのビジネスローンです。
楽天の店舗内のデータをみて融資の条件を決めるので、店舗側としては資料を作ったりする必要がありません。
ほぼリアルタイムのデータを審査する側は確認できるので、急に売り上げが上がって在庫不足になったときのために在庫確保目的の融資などを受けることも可能です。
代表サービスその2 – エメラダ・バンク
エメラダは日本で数少ない株式投資型クラウドファンディングに参入している会社です。
そのエメラダがオンラインレンディングの
エメラダ・バンク
をリリースしました。
エメラダ・バンクは融資判断に決算書だけでなく、銀行の入出金データなどを分析して融資をすばやく実行してくれます。
金利については2%~15%とかなり低いので、銀行から融資を断られた企業などにとっては有難い存在になりそうです。
・エメラダ・バンク
種類その3. バランスシートレンディング
バランスシートレンディングとは、ネットバンクやクラウド会計ソフトから確認できる入出金の状況データから融資の審査を行うオンライン融資の一種です。
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クラウド会計ソフト内の入出金の情報
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銀行口座の入出金の情報
などは、すでに紹介した「トランザクションレンディング」で用いるプラットフォーム内の取引データの結果として生まれるデータです。
そのせいか、バランスシートレンディングはトランザクションレンディングと同じ融資方法だと見なされることもあります。
ふたつの違いをまとめると
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分析するデータの細かさはトランザクションレンディング>バランスシートレンディング
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分析するデータの網羅性はバランスシートレンディング>トランザクションレンディング
となります。
しかし、例えば会計ソフトというプラットフォーム内のトランザクション(取引)は入出金の情報なので、
バランスシートレンディング≒トランザクションレンディング
と考えても問題ないと思います。
代表サービス – MFクラウドファイナンスとマネーフォワードファイン
MFクラウドファイナンスはクラウド会計ソフトや家計簿アプリで有名な株式会社マネーフォワードによって運営されている融資サービスです。
マネーフォワードが管理するデータを提携する銀行などが与信に用いて、お金を貸してくれるのもマネーフォワードではなく提携銀行です。
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MFクラウド会計
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MFクラウド確定申告
などのサービスを使っている方は資金調達が必要になったら「MFクラウドファイナンス」での融資を検討することをおすすめします。
また、マネーフォワードは子会社の「マネーフォワードファイン」を通じて自社からMFクラウドシリーズのユーザーに対して融資を行う事業を開始する予定です。
このための貸金業者登録も2018年11月に完了しており、サービスの開始は2019年の春頃になるようです。
種類その4. P2P融資(個人向けソーシャルレンディング)
P2P融資とは
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お金を借りたい個人
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お金を貸して利息でお金を増やしたい個人
を結びつける金融プラットフォーム[4]お金を貸したい人と借りたい人が集まるサイトのことです。内で行われるオンライン融資です。
P2P融資のP2Pとは、英語のPeer to Peerの略で、専門の貸金業者ではなく個人同士の融資という意味になります。
P2P融資は、
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個人向けソーシャルレンディング[5]日本の一般的なソーシャルレンディングは個人が仲介するプラットフォームを介して事業者に資金の貸し付けを行なっています。
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マーケットプレイスレンディング
などと呼ばれることもますが、個人同士がプラットフォーム内でマッチングされてお金を貸し借りするのに変わりはありません。
個人の信用力をどのようにして
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お金を貸したい個人
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サイトを運営するプラットフォーム企業
などが審査するのかという問題があり、正直なところ日本では普及していません。
海外ではSNSのつぶやきや友達の数と質などのデータを分析して信用力を診断するサービスがあります。
代表サービス – Lending Club(レンディングクラブ)
日本ではP2P融資は普及していません。
かつてはソーシャルレンディングで有名なmaneoが個人間融資に参入しましたが、すぐに撤退しています。
その後は参入する企業もない状態で、日本におけるP2P融資はかなり厳しい状況となっています。
海外では
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Lending Club(レンディングクラブ)
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prosper(プロスパー)
などの有名サービスがありますが、どちらも日本ではサービスを提供していません。
種類その5. プラットフォームに依存しないオンライン融資
プラットフォームに依存しないオンライン融資とは、
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ECサイト
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クラウド会計ソフト
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決済サービス
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オンラインバンク
などと融資の審査事業者が連携し、連携先のデータを審査に使うオンライン融資です。
特定のプラットフォームに依存していないので、融資事業者はたくさんの事業主からの申し込みが期待できます。
融資を受ける側からしても、どれかひとつでも提携サービスを使っていれば融資の受けれる可能性があるので、銀行以外からも融資の検討が可能です。
代表サービス – Lendy(レンディ)
Lendy(レンディ)は株式会社クレジットエンジンが運営する事業者向けのオンライン融資サービスです。
Lendyは日本の代表的な
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クラウド会計ソフト
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ECプラットフォーム
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レストラン評価サイト
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POSレジサービス
などと提携し、提携先の
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入金データ
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出金データ
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(店舗の)予約の混雑状況
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評価サイトでのカスタマー(顧客)からの評価
などのデータを使って与信をします。
審査に関してはAI(人工知能)を使い自動的に融資条件を判定してもらえます。
オンラインデータがお金になるデータレンディングの時代
オンライン融資に関しては、おそらくですが
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個人
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個人事業主
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法人
このどれに対しても信用力をスコアリング(数字化)して融資の実施や条件を決定するサービスが今後増加します。
そして、より良い条件で融資を受けるためには取引や入出金の細かいデータが必要となります。
お金を借りる側としては意識的に質の良いデータを残すように努力しないと融資条件が悪くなり、結果的に金銭的に損をする時代が近づいているのではないかと思います。
つまりデータがお金に代わる時代が来るということです。
なので、オンラインレンディングは
「データレンディング」
という呼び方の方が本当はふさわしいかもしれません。
「データは新しい石油である」
という言葉はけっして大げさな表現ではないのです。