会社などの組織や団体を介さずに個人と個人がモノを売ったり、知識を教えたりすることができる個人間のマッチングサービスが増加しています。
大きな枠組みでは
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CtoC(個人対個人)
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P2P
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シェアリングエコノミー
というカテゴリになりますが、これらをさらに細分化すると
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フリマアプリ
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スキルシェア
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駐車場シェア
などのジャンルがあります。
これらには含まれませんが、日本でも大きな存在感を示しつつある「Love Tech(ラブテック)」と呼ばれるジャンルの
マッチングアプリ
も、個人対個人の取引(恋愛や結婚相手探しを目的として一対一で出会う)の発生を目的としているという点ではCtoCのサービスとなります。
インターネットをつかって気軽に気が合いそうな異性と出会えるのは確かに便利です。
しかし、他人同士が出会うので、マッチングアプリをきっかけとしたトラブルや犯罪が起きていることも事実です[1]https://dot.asahi.com/wa/2018030200014.html。
このマッチングアプリに信用スコアなどの個人の信用力をスコアリングする機能が導入されたらどのような変化が起きるのでしょうか。
現在の仕組みと、その中に潜む危険性などからみて、信用スコアが導入されたらどうなるかを考えます。
このページの目次
通常のマッチングアプリの登録方法や使い方
まず、通常のマッチングアプリがどのような仕組みで、どのような使い方になっているかと、それによる安全性への影響を調べます。
調べてみて、各社がそれぞれの対策をして安全性にはじゅうぶん注意していることがわかりました。
なのでマッチングアプリに対して過度の不安を抱いている方はそこまで心配する必要はありません(とはいえそれなりに危険ではあります)。
ただし、とうぜんアプリによって多少の違いはありますので、もしマッチングアプリを利用するときは注意してください。
18歳以上の年齢確認があり未成年は使えない
マッチングアプリを利用できるのは18歳以上で、もし高校生が18歳になっていても高校在学中ならアプリを使えません。
なので新規で登録した会員に対しては各社が必ず年齢確認を実施しています。
もちろん男女関係なく年齢確認は行われます。
これは、「出会い系サイト規制法」という法律に沿って各社が実施しているようです。
年齢確認がないSNS、たとえばTwitterなどで18歳未満の児童が犯罪に巻き込まれることが増加しているので、年齢確認の有無だけでかなり安全性が高くなりそうです。
しかし、アプリによっては年齢確認をしていないものもあるようで、利用者はまずは年齢確認の有無を確認すべきでしょう。
チェックポイントとしては、アプリや公式サイトのなかに
インターネット異性紹介事業 届出済み 受理番号: 0000000000
などのような記載があれば、その会社は年齢確認を実施しています。
ちなみにこの届け出をだしていることは警察・公安委員会から許可を得てサービスを運営していることを意味します。
登録にはfacebookアカウントを使う
マッチングアプリは登録時に、facebookの
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ID
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パスワード
などの入力を必須にし、そのfacebookアカウントの写真などのプロフィールデータを活用するアプリが多いです。
登録時にfacebookアカウントを使うことにより、
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名前を変えての登録
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二重での登録
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不正なプロフィール
などでの登録を予防する効果があるのでそれらを期待しているのだと思います。
しかし、facebookは偽名でも性別を変えても登録できてしまうので、そもそもfacebookアカウント自体の信憑性が低いという問題があります。
この点、もし
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年齢
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名前
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性別
などのデータが紐づいた固有(ユニーク)の信用スコアサービスが登場すれば、facebookアカウントではなく信用スコアサービスのIDとパスワードを使ってログインするなども可能になりそうです。
信用スコアサービス側が免許証等の公的書類を使って利用者の年齢をチェックしていれば、マッチングアプリ運営会社が自社で年齢確認をする手間やコストが省けるなどのメリットもあります。
アプリによっては入会審査がある
マッチングアプリの入会方法については
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誰でも入会可能(ただし未成年をのぞく)
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入会にあたって審査がある
このように、入会審査が無いものとあるものがあります。
入会審査はないアプリの方が会員が増えやすくなります。
入会審査についても、もし信用スコアサービスと提携していれば一定の信用スコア以上のスコア保有者でないと入会できないようにし、アプリ側で審査する手間が省くことができます。
このような場合はマッチングアプリ側が信用スコアサービスに提携料などを支払うことになるのでしょう。

日本最大級のマッチングアプリ「pairs(ペアーズ)」
プロフィール検索やマッチングアルゴリズムからの紹介で相手を探す
登録が完了したら、次はお相手を探す段階にうつります。
お相手は
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プロフィール検索
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マッチングアプリからの紹介(推薦)
などによって見つけることができます。
マッチングアプリからの紹介については
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GPS(位置情報)
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過去のマッチング履歴
などのデータにもとづいて相性が良さそうな異性を紹介してくれるようです。
いいね!による相互承認が必要
マッチングアプリと従来の出会い系との違いとしてよく挙げられるのが「承認」の仕組みです。
これにより、一方的に片方が興味を持っただけでは駄目で、お互いが好意を抱かないと個別のメッセージが送信できないようになっています。
つまり相互承認がないと何も生まれないということです。
相手を承認するかどうかは
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写真の印象
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プロフィールでのスペック
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自己紹介文での印象
などによって総合的に決まります。
この仕組みによって、特に男性から女性へのアプローチはかなりの高い確率で却下されることになります。
ちなみに、この相互承認の仕組みは
「マッチング」
と呼ばれています。
メッセージを交換して実際に会うか決める
相互の承認がおわり、メッセージが交換できるようになったら、後をどうするかは二人が決めるだけです。
見知らぬ他人同士が会ったりするのはとても危険なように思いますが、
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プロフィールを見ての相互承認
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メッセージの内容を確認してからの承認
という二段階の承認が入るので、実際に会うという段階までいく前に危険だと判断された人は脱落することになります。
とはいえ、詐欺師などの危険人物は上手に自分の本性を隠すでしょうから、実際に会ってからも慎重に判断しなくてはなりません。
マッチングアプリにはどんな危険性が潜んでいるのか
マッチングアプリは知らない人間同士が知り合うアプリです。
なので様々な危険が潜んでいます。
中にはマッチングアプリ運営会社では防ぐことが難しいような危険もありますので、個々で注意・警戒するしかありません。
様々な危険がありますが、いくつかピックアップして紹介します。
危険その1. プロフィールを偽ることが簡単にできる
マッチングアプリでは
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年収
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職業
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学歴
などを記載できる項目がありますが、これらは証拠となる源泉徴収票や卒業証明書の提出が不要です。
なので、簡単にプロフィールの改ざんができてしまいます。
おそらく嘘偽りない事実を登録している人がほとんどでしょうが、中には事実でないプロフィールを登録し、それを悪用している人もいるはずです。
危険その2. 恋愛や結婚目的以外でも登録できる
マッチングアプリの利用者のおおくは
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恋愛(恋活)
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結婚(婚活)
このどちらかを利用の目的としています。
運営会社もそのつもりでマッチングアプリを運営しています。
しかし、
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ただの遊び相手探し
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浮気相手探し
などを目的として利用している人もいます。
なかには結婚しているのに不倫相手を探している人もいるはずですが、その人がどんな目的で登録したかは運営会社からはわかりません。
危険その3. 犯罪履歴などがあっても登録できる
マッチングアプリはたとえ審査があったとしても、その審査は
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外見
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プロフィール(学歴・収入)
などで判断されます。
なので、もし犯罪歴があったり、警察に要注意とマークされているような人物でも登録可能です。
また、様々なところで喧嘩や借金問題等のトラブルを起こしていたとしても、マッチングアプリ上からはわかりません。
相互評価や信用スコアをマッチングアプリに使うと危険性は減るのか
ここまで挙げた危険性をもとに、もしマッチングアプリが
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相互評価によるレビュー
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信用スコア
を導入したら、先に挙げた
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プロフィールを偽ることが簡単にできる
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恋愛や結婚目的以外でも登録できる
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犯罪履歴などがあっても登録できる
これらの危険性がどのように変化するかを考えたいと思います。
プロフィールの詐称は無くなるか減る
もし信用スコアのアカウントを使ってマッチングアプリにログインするようになれば、信用スコアの算出に使った
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学歴
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在籍する会社
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去年の年収
などのデータをそのままマッチングアプリに使うことができます。
もちろん年収などのデータを公開するかどうかは会員が任意で選択できないといけませんが、信用スコアのアカウントを使うだけでプロフィールの詐称はかなり減りそうです。
もし上手く詐称できたとしても、相互による評価やレビューの仕組みがあれば、騙されてしまった人がその内容をレビューとして投稿すればその内容を見た人はプロフィールを偽るような人とは会おうとしなくなるでしょう。
ちなみに、中国の人気マッチングアプリ「百合網」では自分のプロフィールに芝麻信用の信用スコアを表示することが任意で可能となっています。
もし信用スコアが高い人は表示することによって信頼度が高くなり、おそらく異性からの人気も高くなるでしょう。
結婚している人は利用できなくなる
もし信用スコアが個人の戸籍情報と連携していれば、その情報をマッチングアプリ側は受け取ることができます。
さすがに戸籍などの個人情報が日本で信用スコアの判断材料になるとは思えませんが、この仕組みであれば既婚者の不倫目的でのマッチングアプリ利用を防ぐことができます(既婚者が不倫を目的にマッチングアプリを利用することはよくあります)。
そして、このような問題も相互レビューの仕組みがあれば既婚者であることが低評価のレビューとして投稿され、被害者を減らすことができます。
犯罪履歴などはデータの扱い方次第
中国の信用スコアサービスの「芝麻信用」や、アメリカのクレジットスコア(FICOスコア)は個人の
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裁判などの判決
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警察による逮捕
などのデータを信用スコアの算出に使用しています。
日本ではこのようなデータを民間企業が扱うのはかなり困難で、中国のように国家が信用スコアサービスを推奨したり取り組んだりしない限り実現しないでしょう。
信用スコアと相互評価のレビューがあるとどのような影響があるのか
いくつか危険性の例を挙げて、そのような危険が
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相互評価によるレビュー
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信用スコア
によってどう変化するのかを説明しましたが、ここからは信用スコアや相互評価によってマッチングアプリ全体にはどのような影響を与えそうかを考えます。
安全性が高くなる
マッチングアプリには「通報」という機能があり、妙な行動をする人がいたら会員はその人を運営に通報することができます。
この機能だけでも自浄作用のようなものが期待できますが、
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レビューによる相互評価
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個々のプロフィールに表示される信用スコア
の仕組みが導入されたら、不審な行動をする人物は入会したり、会員として活動することが自体が困難になり、結果として安全性が高くなります。
信頼性が高くなり入会者数が増える
日本では少子高齢化が社会問題になっています。
しかし、若者同士が出会う場が減っていたり、恋愛に対して積極的でない男女が増加するなど、少子高齢化の対策が上手くいっているようには見えません。
そんな状況のなか、相互評価や信用スコアが導入されると、マッチングアプリに対しての信頼性や安全性が高くなり、若い男女の利用者増が期待できます。
利用者が増えれば、マッチングアプリを使うことが当たり前になり、マッチングアプリをきっかけに結婚することが普通の物事になるかもしれません。
若い男女が信用スコアを気にしながら生活するようになる
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マッチングアプリに信用スコアの表示が導入されて
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マッチングアプリの利用者が増えている
このような状況だと、信用スコアが高いとマッチングアプリ内において
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人気が出やすい(モテる)
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優先的に良いお相手を紹介してもらえる
などのメリットが発生する可能性があります。
このような、利用者にとって直接的なメリットが発生すれば、マッチングアプリの利用対象となる
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18歳以上の未婚の男女
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20〜40歳の婚姻を希望する男女
などの間で信用スコアを高くしたいという願望が生まれ、信用スコアのアップを意識した生活を送るようになるかもしれません。
出会い系アプリやサイトで導入される可能性もある
マッチングアプリだけでなく、
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出会い系アプリ
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出会い系サイト
などのサービスにも信用スコアが導入される可能性はじゅうぶんにあると思います。
というのも、マッチングアプリも出会い系も
「知らない他人同士が出会うので危険がある」
という点では同じだからです。
出会い系に関してはマッチングアプリと比較するとかなりイメージが悪いですが、機能的には大差はありません。
ただ、
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マッチングアプリは恋愛や結婚を目的とする
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出会い系アプリは刹那的な出会いを目的とする
このような目的の違いがあるだけです。
とはいえ、利用者も危険な目に遭いたくないのはマッチングアプリ利用者と同じです。
よってもし信用スコアが導入されたらサービスの安全性が高くなるので、利用者にとってさまざまなメリットが生まれるはずです。
脚注・引用