株式投資型クラウドファンディングは一般的なクラウドファンディングとは似て非なるもので、
「エクイティ型」
とも呼ばれているように、企業に対して出資するタイプのクラウドファンディングです。
日本では株式投資型クラウドファンディングの数は少なかったのですが、2017年になって
などがリリースされ、ファンド募集が開始されてもあっという間に埋まることが多いです。
つまり投資家から大人気、ということです。
このページでは
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株式投資型クラウドファンディングの仕組み
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株式投資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
などについて解説します。
株式投資型クラウドファンディングはハイリターン・ハイリターンの投資なのでリスク等をしっかり把握してからの投資をおすすめします。
このページの目次
- 1 株式投資型クラウドファンディングとは?その仕組み
- 2 出資のリターンとして投資家が得られるお金
- 3 株式投資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
- 3.1 メリット1 – 投資のリターンが巨大になる可能性がある
- 3.2 メリット2 – 必然的に長期投資になる
- 3.3 メリット3 – 会社の事業の状況について定期的にレポートを受け取れる
- 3.4 メリット4 – エンジェル税制が適用される
- 3.5 デメリット1 – 一般的に企業が上場する確率は極めて低い
- 3.6 デメリット2 – 株式は自由に売買できず換金性に乏しい
- 3.7 デメリット3 – 配当金は期待できない
- 3.8 デメリット4 – 元本保証が無い
- 3.9 デメリット5 – 有望企業の株を購入することは難しい
- 3.10 デメリット6 – 案件として募集される企業が少ない
- 3.11 デメリット7 – 事業や財務分析ができないと出資の判断ができない
- 4 リスクとリターンのまとめ – 全体的にはハイリスク・ハイリターン
株式投資型クラウドファンディングとは?その仕組み
株式投資型クラウドファンディングは大きくは「投資型」に分類されるクラウドファンディングの一種です。
投資型のクラウドファンディングは他に
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貸付型・融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)
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ファンド型クラウドファンディング
などがあります。
株式投資型クラウドファンディングは別名「エクイティ型」のクラウドファンディングとも呼ばれるように
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自社の株式を売って事業資金を得たい株式会社
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株を購入してキャピタルゲインや配当を得たい投資家
この両者を仲介してつなげるwebサービスです。
言い方を変えれば個人投資家が「エンジェル投資家」になれるサービスとも言えます。p>

日本初の投資型クラウドファンディング「FUNDINNO」トップ画面
日本では2015年5月に解禁された
日本の株式投資型クラウドファンディングの歴史は浅く、2015年5月に金融商品取引法等の改正によって解禁されたばかりです。
なので日本ではまだエクイティ型の知名度が低く、サービスを公開しているサイトは少ないです。
※ページ下部で株式投資型クラウドファンディングに対応しているサイトを一覧にまとめています
しかし海外では既に「AngelList(エンジェルリスト)」というサービスがあり、特にベンチャー企業にとっては資金調達の選択肢のひとつとなっています。

AngelList(エンジェルリスト)画面
仲介するのは店頭未公開企業の株式
日本では東京証券取引所等の取引所を介せば企業の株式を売買できます。
しかし、売買できるのは店頭公開されている企業の株式のみです。
その点、株式投資型クラウドファンディングは店頭に公開していない非上場企業の株式、つまり未公開の株式を購入できます。
「未公開株」は詐欺のイメージが強いですが、エンジェル投資家は公開前のベンチャー企業の株式や時には設立する時の企業の株式を出資して購入しています。
つまり「未公開株」が怪しいのではなく、「未公開株詐欺」が怪しいのです。
なので、未公開株の売買と未公開株詐欺は別物だとかんがえてください。
株式投資型クラウドファンディング事業には登録が必要
株式投資型クラウドファンディングサイトはどんな企業でも運営できるものではありません。
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第一種電子募集取扱業者
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第二種電子募集取扱業者
の登録が必要です。
そして、株式投資型クラウドファンディングサイトの案件として公開されている企業はサービス運営社によって審査を受けます。
資金募集会社だけでなく投資家も審査を受ける
資金を集めたい事業者は登録時にクラウドファンディング運営会社からの審査を受けます。
審査内容は
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事業内容や将来の計画
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財務状況
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複数回の面談
などがあり、書類面でも登記簿謄本・決算書・株主名簿・履歴事項証明書等でチェックされます。
※上場企業のように監査法人等による会計監査ではないので注意してください
そして、将来性があると判断された事業者のみがサイト上で案件として公開されます。
将来性がないと
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株式公開
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会社の売却(株式の売却)
等で株主(購入者)に対して還元ができないのでそれなりに厳しいチェックが入ります。
なので、どんな事業者でもクラウドファンディングを使えば資金を集められるというものではありません。
そして、これは実は投資家も同じです。
まず、反社会的勢力に属する人は株式投資型クラウドファンディングを利用して投資はできません。
他にも運営会社独自のチェックが入り、基準を満たせずに口座開設の審査に落ちる人は一定数います。
資金調達と投資(出資)の金額両方に上限がある
株式投資型クラウドファンディングでは資金調達できる金額と、出資できる金額の両方に上限があります。
上限はそれぞれ下記のようになります。
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1社が1年間に資金調達できる金額は1億円
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投資家ひとりが出資できる金額は1社につき1年間50万円
どちらかというと投資家保護のための上限のように感じます。
出資のリターンとして投資家が得られるお金
ここからは出資した投資家が金銭的な面で得られるリターンについて解説していきます。
基本的にはベンチャー企業界隈で「イグジット(出口)」と呼ばれる
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店頭への株式公開
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M&Aや他社への会社の売却(株式の売却)
などの出来事が起きた時に発生する売却益がメインのリターンとなります。
投資先企業が上場した際に発生する売却益
投資先の企業が上場した際に保有する株式を売り出すことができます。
株式上場は
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企業の業績が順調に推移している
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今後の業績拡大を期待でき、将来性も高い
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コンプライアンスを遵守している
※他にも多数の審査基準があります
等の厳しい条件を満たしてはじめてできることです。
そして、上場時は購入時よりも株価が大きく跳ね上がっていることが多いです。
株式購入時と上場時との株価の差異が投資家の利益となります。
よってお金の面では一般的なクラウドファンディングやソーシャルレンディングとは比較できないくらいのリターンが得られます。
うまくいけば数倍〜数十倍のリターンとなる可能性があります。
これは投資型クラウドファンディングの最大の魅力です。
ですが、上場までの道のりは極めて厳しいものになることは間違いないので、出資先に期待しすぎるのは酷ともいえます。
※投資家として株式を売却しないで株主として引き続き名を連ねることも可能です
利益から分配される配当金
もし投資先企業が株主に対して配当金を出すのであれば株主は配当金を受け取ることができます。
しかし、上場を目指すベンチャー企業は発生した儲けを
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積極的に事業や人に対して投資する
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内部に留保して有事に備える
などに使うことが普通です。
配当金を出すということは経常利益を削ることでもあります。
これは株価の評価に係わる部分です。
なので将来の上場を期待できるような会社に対して配当金を期待するのは本末転倒です。
あまり期待しない方がよいでしょう。
そもそも投資先が赤字企業だったり設立して間もない場合もあるので、これらの企業に配当金を望むことは酷です。
株主優待
株主優待に関しても配当金と同じ理由で期待することはできません。
株式投資型クラウドファンディングのメリット・デメリット
ここからは具体的なお金の話以外での株式投資型クラウドファンディングのメリットとデメリットをまとめます。
メリット1 – 投資のリターンが巨大になる可能性がある
企業が有望ベンチャー企業として上場すれば出資した金額が数倍から数十倍のリターンになって返ってくる可能性があります。
これが株式投資型クラウドファンディングの醍醐味です。
未来のgoogleやamazonを見つけることができれば大きなリターンを得ることができます。
メリット2 – 必然的に長期投資になる
株式投資型クラウドファンディングは基本的に購入した株式の売買が自由にできません。
※株主コミュニティで譲渡や売却ができる会社もあります
なので一度購入したらあとはその企業を応援するしかありません。
直近の業績に一喜一憂する必要もなく、世界の景気を気にする必要もありません。
企業の株主として本来あるべきスタンスをとることができます。
メリット3 – 会社の事業の状況について定期的にレポートを受け取れる
出資先の企業は株主に対して定期的にレポートを提出することが義務付けられています。
なので出資先の事業の状況等を把握することができます。
メリット4 – エンジェル税制が適用される
要件を満たせばベンチャー企業の支援する「エンジェル税制」という仕組みを投資家として利用できます。
エンジェル税制にはざっくり言うと
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ベンチャー企業への投資額をその年の所得額から控除
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その年の株式売却益からベンチャー企業への投資額を控除
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売却による損失が出た場合、その年の株式を売買して得た利益から相殺できる
などの節税面でのメリットがあります。
ただし、個人投資家・ベンチャー企業共に税制が適用されるための条件がありますので適用されるかどうかを都度確認してください。
デメリット1 – 一般的に企業が上場する確率は極めて低い
株式投資型クラウドファンディングにおいては企業の上場が最大のリターンです。
しかし、冷静に考えれば投資先の企業が上場できる可能性は極めて低いと判断せざるを得ません。
まず、日本にある株式会社の数は100万社以上ですが、そのうち上場企業の数は3500社前後です。
仮に株式会社全体の数を150万社とした時、上場企業の割合は全体の0.2%です。
さらに上場できた企業のうち
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大手企業の子会社
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最初から大企業や有名投資家から出資を受けていた
など、かなり良い条件でスタートできた会社を除けば上場企業の割合はさらに減ります。
よって投資先の企業に上場を期待するということは、非常に低い確率にお金を賭けていることになります。
デメリット2 – 株式は自由に売買できず換金性に乏しい
購入した株式は市場に公開されていませんので自由に売買できません。
なので急に現金が必要になったタイミングなどで換金することはできません。
よって余ったお金で投資することをおすすめします。
デメリット3 – 配当金は期待できない
投資先はベンチャー企業ですので、配当金や優待は期待できません。
投資先が上場するか、他社に売却されるまではリターンは返ってこないと最初から考えておいた方が健全です。
デメリット4 – 元本保証が無い
株式投資型クラウドファンディングは元本の保証がありません。
50万円で購入した株が投資先企業の倒産などで1年後は0円になる可能性があります。
デメリット5 – 有望企業の株を購入することは難しい
大前提となりますが、将来を嘱望されるベンチャー企業は
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VC(ベンチャーキャピタル)
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実績があるエンジェル投資家
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大手銀行
などによる出資を受けるパターンが多いです。
新進気鋭の注目企業はクラウドファンディングを利用しなくても出資の話が向こうからいくらでも来ます。
出資を受けることはただお金を得るだけでなく、出資先が持つコネクションや知見を利用できるようになるというメリットがあります。
この点株式投資型クラウドファンディングは確かに資金は集まるかもしれませんが、お金の面以外でのメリットは少ないです。
将来有望な企業にとっては株式投資型クラウドファンディングはファイナンスの選択肢には上がりにくいかもしれません。
デメリット6 – 案件として募集される企業が少ない
株式投資型クラウドファンディングに案件として募集される企業は
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将来性があり
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VC等から出資を受けていない
という条件になると思います。
将来性が乏しい企業ばかりを案件として揃えても数年後に非常に厳しい結果が出るので運営会社もしっかり審査を行います。
となると案件数がかなり絞られる可能性が高いです。
しかしそのリターンの大きさから株式投資型クラウドファンディングは個人投資家からの注目度が高いです。
となると案件として公開された直後に応募が殺到し、応募は早い者勝ちのような状態になってしまいます。
本来であれば投資先企業の事業や財務、さらには経営者の人柄などをじっくり吟味して投資を決めないといけないのですが、ゆっくり考えていたら満口となり募集が終了してしまいます。
デメリット7 – 事業や財務分析ができないと出資の判断ができない
店頭公開された会社と違い、株式投資型クラウドファンディングに登場する会社の情報は少ないです。
少ない情報の中から投資家は出資するか否かを判断しなくてはいけません。
となるとアナリスト等に頼らす自分の頭はで事業や財務分析をすることになります。
リスクとリターンのまとめ – 全体的にはハイリスク・ハイリターン
全体的なことをまとめます。
株式投資型クラウドファンディングは
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リターンは可能性としては巨大ですが、全体的にはあまり期待ができず宝くじのような確率
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リスクは大きい
ということになります。
ハイリスク・ハイリターンですので、余剰資金で行うことをおすすめします。
日本で株式投資型クラウドファンディングを扱っているサイトをまとめます。