マッチングアプリによって「日本の結婚数(婚姻件数)」は増えたのか?

マッチングアプリで知り合い、交際し、結婚する夫婦が増えていると言われています。
たしかにマッチングアプリは便利です。
共通点がない異性とも簡単に出会うことができます。
たくさんの人の中からデート相手を探すことができます。
これらは、インターネットがない時代からは考えられないことです。

マッチングアプリをきっかけに結婚する夫婦が増えているのなら、マッチングアプリによって日本の婚姻件数(結婚数)は増えたのでしょうか?
このページでは、マッチングアプリが日本の結婚数に与える影響をデータを使って調べます。

もしマッチングアプリによって日本の結婚数が増えているのなら、日本の少子高齢化を救うのはマッチングアプリかもしれません。
少子高齢化は日本が抱える社会問題です。
マッチングアプリは社会問題を解決するのでしょうか?

日本人の結婚適齢期は何歳?

マッチングアプリが結婚数にあたえる影響を調べるために、まずは調べる対象を決めます。
調べたいのは結婚に関するデータなので、まず最初に日本人の
「結婚適齢期」
を決めます。

結婚に適した年齢=結婚適齢期は、人によって考え方が違います。
時代・社会によっても変わります。
この記事では2018年の日本の男女合計の平均初婚年齢である「約30.3歳」から上下10歳を結婚適齢期とします。
20代・30代・40代ですね。
日本人の結婚の多くがこの範囲に収まるはずです。

日本人の平均初婚年齢の推移

平均初婚年齢のデータは厚生労働省が発表している
平成30年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況
この統計をつかっています。
それにしても、2014年から2018年までの5年間でまったく変わっていないのは不思議です。
なんとなく、晩婚化が進んでいるような気がするのですが・・・。
私の気のせいかもしれません。

結婚適齢期の人口の推移

次は結婚適齢期に該当する人の人口の推移をまとめます。

日本の20・30・40代合計人口の推移

2,008年の結婚適齢期人口は約4,953万人でした。
これが、2019年には約4,558万人にまで減っています。
結婚適齢期に該当する男女は、ゆるやかですが確実に減っていることがわかります。

11年間の減少率は約8%です。
人数で見ると、約395万人です。
静岡県の総人口(約364万人)以上の人が減った計算になりますね。
なかなかインパクトのある数字です。

このデータは総務省統計局の
人口推計の概要,推計結果等
にある統計を使いました。

日本の婚姻件数(年間結婚件数)の推移

日本の結婚数を把握するため、日本の婚姻件数(年間結婚件数)の推移を図にします。

日本の婚姻件数(年間結婚件数)の推移

2008年に約72万件あった婚姻件数が、2019年には約58万件になっています。
すでに紹介したように、20代30代40代の人口は減っています。
婚姻件数も減るのは当然です。
それでも2008年から2019年までの減少率は約20%と、インパクトのある数字になっています。

データは厚生労働省が発表している
人口動態総覧の年次推移
を使いました。

結婚適齢期100人あたりの結婚数

  • 結婚適齢期の人口
  • 日本の結婚件数

このふたつのデータがそろったので、結婚適齢期100人のうち何人が結婚しているかも見てみましょう。

結婚適齢期100人あたりの結婚数推移

2008年には100人あたり1.46人の割合でしたが、2019年には1.28人にひとりになっています。
基本的には右肩下がりですね。

2011年に急な落ち込みがあります。
これは東日本大震災の影響でしょうか。
大規模な災害は、人の人生におおきな影響を与えることがわかります。

マッチングアプリの市場規模の推移

データはこれが最後で、マッチングアプリの市場規模の推移です。

マッチングアプリの市場規模の推移

マッチングアプリの歴史は浅いです。
2012年2月に「Omiai」がサービスを開始したのが日本におけるマッチングアプリのはじまりだとされています。
それから順調に利用者が増え、市場規模も伸びていることがわかります。

マッチングアプリではお金を払うのは基本的に男性のみです。
男性が有料会員になり、毎月支払う金額をかりに4,000円とします。
そして、平均6ヶ月ほど活動すると仮定します。
4,000円×6ヶ月で24,000円ですね。
これを市場規模で割ると

  • 2015年の120億円÷24,000円=約50万人
  • 2019年の510億円÷24,000円=約216万人

これぐらいの数の男性がマッチングアプリで活動している計算になります。

2019年の結婚適齢期の男女が約4,557万人です。
約半分の2,279万人が男性だとすると、だいたい10人に1人がマッチングアプリで課金している計算になります。
意外とマッチングアプリを使っている人は少ないのかもしれません。

データは「タップル誕生」を運営していることで有名なマッチングエージェント社による
マッチングエージェント、オンライン恋活・婚活マッチングサービスの国内市場調査を実施
これらの発表を使っています。

マッチングアプリは伸びているけど結婚件数は・・・

ここまでのデータを整理します。
結婚適齢期の人口が減っていることをふまえても、婚姻件数は下がっています。
「結婚適齢期100人あたりの結婚数」
の図をみると、結婚する人の割合が減っていることがわかります。

たいして、マッチングアプリの市場規模は順調にのび、若者の間ではスタンダードは「出会いの場」となっています。

  • 結婚適齢期100人あたりの結婚数
  • マッチングアプリの市場規模の推移

の推移をひとつのグラフで見てみましょう。

「結婚適齢期100人あたりの結婚数」 「マッチングアプリ市場規模」 の比較

マッチングアプリの市場規模は順調に伸びています。
たいして「結婚適齢期100人あたりの結婚数」は下がっています。
けれど、2018年と2019年の結婚数の数字は両方とも
「100人あたり1.28人」
で同じです。
2019年頃に何が起きたのでしょうか?

まず考えられるのは「令和婚」の影響です。
令和に結婚したいから、2018年に結婚する予定のカップルが2019年5月以降に先延ばしした、ということですね。
これなら、2017年から2018年にかけてのグラフの落ち込みも説明できます。

結婚適齢期100人あたりの結婚数(2014年〜2019年)

ちなみに、2019年5月1日から元号が変わることは2017年の12月にほぼ決まっています[1]NHK政治マガジン:新元号には、いつ変わる?
だから、このニュースを聞いてから結婚式や入籍の日時を2018年から2019年に変えることは不可能ではありません。

他に考えられるのは、マッチングアプリの本格的な普及による影響です。
検索エンジンの「Google」が公開している、特定の言葉の検索回数の推移がわかるツール「Googleトレンド」によると
「マッチングアプリ」
という言葉の検索回数が増えたのは2016年頃からです。
2012年から公開されていたけれど、世間的に認知されて「当たり前」になったのは2016年頃から、ということでしょう。

Googleトレンドによる「マッチングアプリ」という言葉の検索回数推移

仮にマッチングアプリで知り合い交際をはじめてから、結婚するまでの平均期間を2年とします。
もし2016年・2017年頃に知り合ったカップルが多ければ
「2019年に結婚しよう」
と決めるカップルも多そうです。

話を結婚適齢期100人あたりの結婚数に戻します。

  • 2018年の100人あたりの結婚数:1.28人
  • 2019年の100人あたりの結婚数:1.28人

このように、2018年から2019年にかけて、100人あたりの結婚数はほぼ変化していません。
このタイミングで、なぜ結婚適齢期100人あたりの結婚数が下げ止まったのでしょうか?

  • 令和婚
  • マッチングアプリの本格的な普及

などの影響が考えられますが、正直なところ2020年以降のデータを見ないとわかりません。
すくなくとも、少子高齢化対策としてマッチングアプリに劇的な効果がある、ということではなさそうです。

マッチングアプリは便利ですが、負の側面もあります。
他のデータですが、マッチングアプリの普及によって性病に感染する人が増えたのかも?という統計があります。

ほんらいマッチングアプリは恋活や婚活向けのアプリです。
しかし、出会い系アプリのように「セフレ探し」や「ヤリ目」を目的として使っている人が意外と多いのかもしれません。
すこし古いデータですが、SNSや出会い系でセフレを作っている人が多いというデータもあります。

マッチングアプリが、日本人の未婚化を救う救世主になる日はくるのでしょうか。

脚注・引用

脚注・引用
1 NHK政治マガジン:新元号には、いつ変わる?